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2004-10-31 (Sun) リハビリ中 [長年日記]

_ Persuasive TechnologyとPersuasive Architectureは似て非なるもの?

かなり前に人机交互論などでとりあげられていたThe User-Centric Design TrapにおけるPersuasive Architectureに関する一連の論争についていまのうちにフォローする.

インタフェースに対する考え方として「人工物側がユーザ側に適応するように設計されるべし」という見方と,逆に「ユーザ側が人工物側に適応すべし」という2つの見方がある.ここで後者のようなスタンスをとると,ユーザビリティ関連のお仕事に携わる方々であれば「とんでもない考え方だ」と非難されるであろう.もちろん,想定されるユーザにとって使いやすいインタフェースの設計に対する努力は当然ながら必要だし,UCDは品質保証活動という見方については強く同意する.しかし,ユーザと人工物とのインタラクションの中で,ユーザは少なからず人工物側に適応せずにいられないところが存在するわけで,ここに対してPersuasive TechnologyもPersuasive Architectureもフォーカスが当たっているはずなのである.だが,ホワイトペーパー(PDF,484KB)や関連記事(日本語版はかえって混乱するので原文のDo You Want to Inform or Persuade?The Five Issues that Persuade Visitorsにも)に目を通したものの,いかんせんPersuasive Architectureについては人間の意思決定プロセスのモデル(これの原典らしきものも見当たらず,私が読み落としているのか?)とこれまでのUCDのアプローチを摺り合わせただけにしか読み取れない.理論的なバックグラウンドはどの辺だろう,と調べてみても出てくるリソースがWhy We Buy日本語訳)のみ.この本はショッピングにおける人間行動の観察の際のデータのとり方以上の説明はない.これで「UCDなんてもうダメ.これからはPersuasive Architectureだ!」と言われても納得はいかないだろう.

さて,Persuasive Technologyの方だが,Jakob Nielsenが絶賛していると言っても一番絶賛している箇所はWeb Credibilityに関するところである.Persuasive Technologyの中のWeb Credibilityの章については調査の規模の巨大さの割にはNielsen本人の本の主張の繰り返しの域を出ていないように読めてしまう*1し,Web Credibilityが書かれているChapter 7より前の章にPersuasive Technologyのキーになる理論の土台が説明されているのにそこに関してはNielsenは言及していない.ここが一番肝心なところなのだが.

Foggの「ユーザを説得する情報技術としてのコンピュータの3大機能」として次のものが挙げられている:

道具としてのコンピュータ(Computers as Persuasive Tools)

ここにUCDがカバーしているユーザビリティの向上が含まれていると考えられる.「どのようにユーザの入力の手数を減らすか」「どのようにユーザに対して情報のナビゲーションをうまく行うか」「どのように,またどの程度個々のユーザに対してパーソナライズされた情報を提示するか」といった点についてはUCDの守備範囲で,ユーザビリティ関連のお仕事に携わる方々が活躍できる場である.ほか,推薦システムの導入,万歩計のような自己モニタリング,ユーザに対するある行動へのオペラント条件づけ,複数ユーザに対する各ユーザの互いの行動の相互監視,といった例が挙げられている.

メディアとしてのコンピュータ(Computers as Persuasive Media)

メディアといってもここで指しているのはユーザ間インタラクションのことではなくユーザと環境とのインタラクションのこと.より具体的にいうと現実世界のシミュレーションとその結果のユーザへのフィードバックのことである.地球環境シミュレータのようなもののパラメータをいじってその影響をみたり,VR環境でそう簡単に体験できないような作業を模擬的にやってみたり,といったものがここに含まれる.

社会的行為者としてのコンピュータ(Computers as Persuasive Social Actors)

コンピュータに対する社会的反応からユーザの態度の変容を促すアプローチを指す.コンピュータのアピアランス,「性格」のデザイン,言葉遣い,協調作業や互恵的行為などの社会的インタラクション,コンピュータに対する社会的役割の割り当てといった問題がある.これについては『人はなぜコンピューターを人間として扱うか:「メディアの等式」の心理学』も参照.Fogg自身が関わった研究も含まれている.

つまり,Persuasive Technologyはこれまでの「人工物側がユーザ側に適応するインタフェース設計」という見方に加えて「ユーザ側が人工物側に適応するインタフェース設計」にも踏み込もうとしているわけだ.もちろん前者は前者で重要だが,特に後者についてはまだまだ研究の現場でもこれから,という状況なので今後追求が必要だろうと考えられるし,私の現在の研究スタンスも後者である.ここまで説明しないとなぜ"Persuasion"という視点でインタフェースを捉える必要があるのかが伝わらないであろう.

そろそろPersuasive Technology in Japan Wikiでも立ち上げようかと考えているところ.今週中にやろう.

*1 最近の研究はもっと対象を絞っているようなので,もう少し独自な結果が出ている可能性があるがフォローし切れていない.興味のある方はWeb Credibilityのサイトからリソースをたどられたい.

_ 書店巡礼

新宿ジュンク堂が新たにオープン.新宿東口は紀伊国屋もあるしどうだろうと思っていたが,特に専門書のかゆいところに手が届く品揃えはなかなかのものだった.「神田三省堂よりいい」という声も聞いたが,そんな反応が出てくるだけのことはある.新宿で書店巡回モードの際は巡回対象に入れよう.先々週覗いた丸の内オアゾの丸善は八重洲ブックセンターを線路の反対側にごっそりコピーしたような印象が強く期待外れ気味だっただけに,なおさら.

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